第2章

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少女は闇の中にいた。 右も左も 上も下も 前も後もわからない。 こんな場所は初めてだった。 否、少女はただひとつの場所しか知らなかったのだが。 少女はつま先からゆっくり動かし 歩いた。 歩き続ければ光があると信じて。 しかし少女の願いも虚しく 光が見えることはなかった。 自分がきちんと歩けているかわからなかった。 少女は少年の名前を呼ぼうと 喉を震わせた。 けれど、発せられるのは 意味を持たない言葉ばかり。 少女は今更気付かされた。 少女は少年の名前すら知らなかった。 知らなくても 名前を呼ばなくても 不自由のない場所にいたから。
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