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だから少女は
少年が実体のない存在なのだと
勘違いした。
そういうものだったのだ、と
信じ込んだ。
疑うことをしなかった。
なんせ、知らなかったのだから。
少年は少女の隣に腰を下ろした。
少女もつられて、腰を下ろした。
少年はいつかのように
ゆっくりと話し始めた。
少年は出逢ったときと同じ話をした。
少女の住んでいた場所のこと
変わりゆく空のこと
いつかほろびた時間のこと。
少年は一度たりとも
同じ話をしたことがなかったのに?
そんなことは、今の少女にはどうでもよかった。
少女はいつかのように
何も言わず
じっと聞き入っていた。
少年の声を聞いているだけで
少女は、幸せだった。
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