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サンタクロームXマス
クリスマスは恋人同士で過ごすのが醍醐味だなんて、いったい誰が決めたんだろう。
だいたい私は信じない。
12月25日なんて
もう私にはいらない日なんだから…
◆◆◆◆◆◆
「やっばい久々の大遅刻!
可南子に1時限目のノート取っといてもらわなきゃ!」
とはいえ、スマホを片手に地下鉄までの道のりをダッシュするのだけは、いつも通りの朝。
父は物心ついた時から単身赴任でめったに帰らないし、母は朝早く仕事に出掛けて深夜に帰宅するために
私は中学生の頃から、家事を含めて自分の事はほぼ自分でしなきゃならない切ない身の上なのだ。
地下鉄への階段を二段飛ばしで駆け下りると、改札を目前に鞄の中の定期入れをまさぐる。
「うわっ!」
ドンッ!
「痛って!」
「わ!ご、ごめんなさいっ」
鞄からこぼれ落ちたノートや筆入れが散乱する床。
朝っぱらからやらかしてしまった…
見れば私の大切な漫画本と、もう一冊。
全く同じ大きさ同じカバー付きの本が落ちている。
真っ白になった頭で躊躇してる間に、先に一冊を拾い上げたのは他高校の制服だった。
「本当にすみませんでした!」
大きく一礼する私を振り向きもせず去っていくダークグレーの制服。校則を疑いたくなるようなアッシュグレーの無造作な短髪。
人混みに小さく消えていくその後ろ姿から、どこかの高校の男子生徒という事だけは一目瞭然だった。
でもそんな事に目をくれる猶予なんて私には許されていない。
漫画本を軽く手のひらではたいて手早く荷物をかき集めると、ちょうど到着したばかりの電車の車両に体を捻り込ませた。
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