サンタクロームXマス

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無いっ無い無いっ! 「『マッスグドライブ』初版数量限定特典作者様サインが 無いーっ!!」 三度の飯よりイケメンより大事すぎる、私の宝物。 作者のみっつん先生のサイン付きと知るや、通販サイトと本屋の両方から速攻で予約して、手に入れた10冊近い中からゲットした夢の一冊だったのだ。 「絶対あの時だ…私のバカバカバカッ! こんな不幸すぎる偶然とか…有り得ないよ…」 裏表紙に直筆で書かれたサインを、明け方まで眺め倒して寝落ちしたまでは良かったけど 名残惜しい余りに通学鞄にしまったのが、まさかこんな形で裏目に出てしまうなんて… 今まさに、私の小刻みに震える手の上のマスドラには、そのサインがどこにも見当たらないのだ… その重大な事実に気付いてからは、もう授業どころじゃなかった。 それから数日間。 どれだけ探し回ったかすら覚えていない。 街は日を追う毎にクリスマスカラーに染まっていくけど プレゼントもサンタクロースも私にはずっと前から、何の意味ももたらさない下世話な紛い物でしか無かった。 そうだ。今の私には漫画本さえあれば何の問題も無いったら無い! なのに 本屋にもホームにも心当たりの場所のどこにも、憎々しいダークグレーの制服は見当たらない。 ヤツの高校を探り当てようと、友人に手当たり次第聞きまくるも「わからん」のコメント以外の情報は無し。 「制服の色だけじゃ無理無いのかな… もうこうなりゃ 改札前で待ち伏せる!」 ただでさえも浮かれムードの漂うこの時期に きっと今の私は世間様から言うところの『痛い人』なのかもしれない。 確かに取り立てて目を引く可愛さも萌えも無し。胸も大して無し。 単なる漫画好きな女子高生ですが何か?なんて決して口には出さないけども。
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