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放課後、意を決して待ち構えたけど…待つこと1時間。
目的の相手はそうそう姿を見せてはくれない。
それよりもさっきから気になって仕方ない光景が、私の視界の先を離れないでいた。
お婆さんが辛そうに腰をさすりながら、大きな荷物を抱えて困っている。駅員はクレーム客にかかりきり。
私は痺れを切らして声をかけた。
「あの…大丈夫ですか?」
「ああ…ありがとう。
ちょっと…荷物が重すぎて捻ったみたいでねぇ。」
お婆さんは私の問い掛けに弱々しく、でも心底嬉しそうに目を細めた。
「医務室行きましょう。貴重品無いなら、とりあえず置いておいて。
私おぶりますから。気にしないでどうぞ。」
お婆さんは少し困った顔で断ったけれど、みるみる青ざめていく顔色と額の脂汗をほっておくわけにはいかない。
私は窓口を気に留めながら、断り続けるお婆さんに背中を差し出し続けた。
「お言葉に甘えてじゃあ…ありがとうねぇ。」
ようやく膝を折ったお婆さんを背に、よろめきながら歩く私の前から歩いてくるあれは
まさかのダークグレーの制服…!
時間的にも閑散とした駅構内で多少の距離はあったものの
あのアッシュグレーの短髪とのグレーセットは、どんな場所でも目立ちすぎるほど目立っていると思う。
無我夢中で投げかけた熱い視線と、感情の読めない一見クールな瞳がはっきりと合わさった。
はずなのに
「ってスルーかよ!ちょっと待っ…」
間違いない。
あの制服と髪の色は、そうそう目にするものじゃない。
でもこの状況を無表情でスルーするなんて、もしかしたらものすごい最低野郎なんじゃないの!?
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