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「それで…?」
暖房の利いた昼休みの教室。
友人の可南子が眠そうな声で問いかける。
「それで…って
無理やり携帯番号と名前交換して別れた…」
「ふーん…それだけ?」
「それだけじゃないよ!
アイツ別れ際に何て言ったと思う!?
『あんたってケンカ売るの趣味とか?』って言ったんだよ!
ナメんなチキショー!」
私は突っ伏したままの机を叩き割る勢いで拳を打ち付けていた。
頭上から加奈子の聞こえよがしな溜め息が降ってくる。
「だいたい、どこの高校か聞いたの?」
「この際そんなの興味ないしっ
あの無表情な顔面にこの黄金の右めりこませてやればよかったあぁ!」
「てかさぁ星南。
この際恋の1つでもしちゃったら?」
「は!?なななんですぐそういう事を言うかねキミ!?」
無意識にまぶたをよぎるアッシュグレーの髪。無表情な目も
ちょっ!何であんなヤツの顔が鮮明に…
星南、一生の不覚!
「もう12月だよ?
その聖くんとも番号まで交換したんならさ。誘っちゃえばいいのに。
いい加減漫画ばっかじゃなくて現実を見なよー」
さすがに恋をする乙女は平気で痛いとこを付いてきやがるわけで。
可南子の長くカールした睫毛や仕草なんかが最近やけに艶めいて見えるのは、きっと現在進行形ラブラブまっしぐらな彼氏のお陰なんだろうと思う。
つい最近まで、私と同じく化粧っ気の無い顔で呆けていただけの女だったはずなのに。
人は恋をするとこうも変わるものなのかとか、昔の人は上手い事言ったものである。
胸の奥が妙にむずがゆかった。
それでも私はわざと気付かないふりをしてしまう。
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