サンタクロームXマス

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私だって信じてた。 今だって本当は心のどこかで それでも信じたい って… でも私はもうそんな思いはずっと前に、固い箱にしまい込んで意識の底に封じ込めていた。 もう二度と、身分不相応な夢を見ないために。 あれは10歳の年の12月。 心の底からサンタクロースを待ち望んで、欲しかったプレゼントを思いを込めてしたためた手紙だった。 いくら半年ぶりとはいえ 気軽に「サンタクロース宛てに出すんだ」なんて、話した相手が間違いだった。 『サンタなんてまだ信じてるのか。 そんなものいるはずがないだろう。 クリスマスだサンタだなんて夢見る暇があったら勉強しなさい』 取り上げられた手紙は私の目の前で 父の手で2つに切り裂かれた―― 世の中が浮き足立つ12月24日。 母の書き置きと一緒に冷蔵庫に置き去りにされた、形だけのクリスマスケーキ。1人きりの聖夜。 父親の言葉と仕打ちは、私のクリスマスを粉々に砕いてしまった。 だから あれから私にとってのクリスマスは苦痛でしかなかった。 何となく分かってはいた。 それでも信じていたかった。 せめて 信じられたあの頃までは―― そうきっと どうせアイツも同じことを言うに決まってる… ふいにスマホの着信音が涙を引っ込めた。 画面を確認した私は、恐る恐る通話アイコンに触れた。 『来いって言ったろ。』 聖の少し怒ったような声が鼓膜を通して心を震わす。 私はもう、私を信じないって決めたんだから。構わないでよ… 「お詫びなんて…いらないって言ったでしょっ」 『今日が何日かわかってるならさ、空気読みなよ。』 「は!?それが私と何の関係があるわけ!?」 『とにかくその格好じゃ絶対寒いから、早く厚着して。 じゃあ待ってるから。』 聖は一方的にそう言うと、言い返す間もなく電話を切った。 「なにそのまるで今私を見てるみたいな… 本当に一方的で失礼なやつっ」 でもその思いは、すぐに違和感に変わる。 それはスマホからの音じゃなかった。 耳を澄まさなくても 窓の外から確かに聞こえる 鈴の音――
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