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「銃はうちらだけ。あとの皆は鉄パイブやバット。それでええんちゃうんかい」
この飛鳥の意見で一同、ようやくその方針で行くことに踏み切った。島の娯楽用だったのか、金属バットは東館の広場の倉庫に何本かあった。そのうちの一本は飛鳥が愛称をつけて持ち歩いている。なんだかんだ言っても<殺しはしない>が飛鳥のポリシーだ。
そして全員集められて、まず最初に代表として口火をきったのが飛鳥の真面目ともボケともわからない宣言である。
しかも、肝心の飛鳥はというと、自分の宣言が終わるとさっさと<新・煉獄>の方に帰って行く。
途中で振り返り「片山さん、田村さん、あとヨロシク♪ うち、ヤボ用」と一言言い残し帰っていった。飛鳥はリーダーとなり率先して皆を引っ張っていく気はないらしい。
片山たちは顔を見合わせ…… 結局片山と田村、岩崎の三人がこの後どうやるかを説明するため残り、未成年の宮村は飛鳥の後を追った。
「ま…… 考えてみれば……若い子たちをリーダーにしなきゃいかんっていうのも大人として情けない話ですからねぇ。30歳以上の成人としては本来の役目を果たさんといかんでしょう」
岩崎はそう苦笑し片山を見た。その言葉に片山、田村の二人も苦笑せざるを得ない。
拓ですら29歳だからギリギリ【30歳未満未成人】、サクラにいたっては10歳で普通は論外だ。
しかし、彼らの存在がなくなって改めて思い直せば、これまでこの島のゲームで存在感を示してきたのは若者ばかりだ。飛鳥、涼、宮村はまだ10代の少女たちで、敵である村田や篠原は20歳前半。今は戦力にならないが修羅場を経験したのは大森、樺山、三浦、<こんぴら>……彼らは20代だ。
「かくて老兵のみが残る、ですなぁ」
「あら、私はまだそんな歳ではないですわ」と田村が苦笑する。
「俺もだよ。しかし俺たちはギリギリ岩崎さんのいう【成人】だからねぇ」
そう答えた34歳の片山は、動揺し困惑する生存者たちを見た。
俺たちだけで何とかしないと、あまりにみっともないではないか。
「それでいくと、僕は未成人ですから……」
佐々木稔が苦笑した。一同小さく噴きだす。片山は、「逃がさないよ佐々木クン」とぐっと佐々木を掴んだ。
米国人の拓やサクラは知らなかったが、後発参加者のタレントの中で、この佐々木稔だけは<新戦闘可能要員>として片山たちが引っ張り込んできた。
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