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彼は細身でまだ幼さの残る優しい顔立ちだが、元ボクシング選手・現在肉体系キャラの雛壇コメディアン……という経歴の持ち主で、体を張った海外ロケなど多くこなし、白兵戦闘力は高い。そしてこの島で起きている事件を冷静に受け止めるだけの知力と適応力も持っていた。本人も戦闘者になることを承諾した。
その時、住宅地のほうから聞きなれてしまった狂人鬼の奇声と犬の声が聞こえてきた。
もう彼らも馴れてしまった。このくらいで一々反応しない。
どういう訳か、今のところこの<新・煉獄>エリアの方には狂人鬼も狂犬も近くまでは来ても侵入してこない。サタンが『ここは安全です』と言い切っていた事を考えて何かしら細工がされているのか、拓とサクラが何か仕込んだかは分からないが、今のところここが襲撃されることはない。
もっとも……根拠のない偶然の可能性も大きい。安心して胡坐をかいていては足元をすくわれる事は確実だ。
「あのゲスの村田の野郎が黙ってファイナル・ゲームまで大人しくしているものか。きっと何かしてくるだろうさ」
ファイナル・ゲームはこのゲーム終了間近だとサタンは宣言していた。後10時間はある。それまで、ただ狂人鬼や狂犬を放って終わり……というのは考えづらい。片山の言葉は推測ではなく、全員確信を持っていた。
同時刻 <新・煉獄>
宮村が飛鳥を一階の部屋で見つけた。
飛鳥はサクラのデニムの上着とジーパンを広げ、その前に座っていた。宮村が入ってくると、すぐに振り向き「おう! どないしたん? ミヤムー?」といつもの調子で笑みを浮かべている。
宮村は黙って飛鳥の横に座ったのを飛鳥は確認してから、得意げに今自分がやろうとしている行動を話し出した。
「あのクソガキのアイテム発掘や♪」
「ただのデニムの上下じゃ?」
「と……普通の人は思っておりますが…… 実はアヤツのアイテムは何から何まで特別なんや♪ さて、どんな秘密があるかミヤムーは分かるかい?」
「そういえば、サクラちゃんヘンな事言っていたわね。『すぐに乾くから』って」
そう言いながら宮村はサクラの上着を触り、眼を見開いた。もうほとんど乾いているのだ。水をたっぷり吸ったデニム生地が、二時間そこらで乾くはずが無い。
不思議そうに何度も触るが、満遍なく乾いている。しかし触感は普通の厚手のデニムだ。
「では手品や♪」
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