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パルム地方南部、ルデ村
村へと続く街道の途中、その街道と森との境に、みすぼらしい小さな家屋があった。
木製の壁にはところどころに苔が自生しており、つる状の植物が屋根まで達している所もある。
一見してみると、空き家のようにも見えるが、中から男女の声が聞こえてきた。
「お父さん、それじゃぁ行ってくるね」
「あぁ、いつも悪いな……暗くなる前には、帰るんだぞ……」
暖かな日の光に照らされ、少女の姿が写し出させる。
雪のように白い肌と、黄金色の髪が印象的な少女。
腰まで伸ばされたその髪は、光に照されることでさらに美しく輝き、それはまるで金色に輝く絹のようだった。
彼女の名前はアルル。
ベッドに横になっている男性の娘である。
床に伏せている父や家計のために、森に薬草を摘みに行くようだ。
「うん。夕方までには、ちゃんと帰るね」
そう父につげると、少女は扉を開け、外へと飛び出した。
「お……おい、アルル!!籠……籠!!」
手ぶらで出掛けようとしている娘を、すぐさま呼び止める。
どうやら、摘んだ薬草を入れる籠を持たないまま、出掛けようとしていたようだ。
「え!?……本当だぁ!?また、やっちゃうところだったぁ……お父さん、ありがとう」
少女は父親に感謝の言葉を返すと、慌てて室内に戻り、机の上に置いてあった籠を手に取る。
「あぁ、気をつけて行ってくるんだぞ」
少々、おっちょこちょいなのが、悩みの種であった。
そんな父親の気も知らず無邪気に笑うと、ゆっくりと扉を閉め駆け出して行った。
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