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彼女の住む岡山から倉敷はJRで20分ほどで、よく訪れていたらしい。椿は倉敷のことを話す時、いつも「なぜか落ち着くんだよね」と言っていた。そして「いつか案内するよ」と言ってくれていた。
なのにまさか一人旅になるとは。
でも披露宴前日に案内してもらうなんでできるはずもないし。おめでたいことだし、案内はまた今度してもらうことにして。とりあえず今日はガイドブックを片手に一人で歩いてみる。
彼女が岡山で暮らすのならば、今後いくらでも機会はあるはずだ。
そう、きっと私はまたここに来る気がしていた。
まだ足を踏み入れたばかりなのに、
“なぜか落ち着く”
椿がそう言った気持ちがなぜだか少し分かる。
駅前の風景に都会のような華やかさは見られない。だけど何ともいえない哀愁が漂って、懐かしいような心地良さがある。
今日はずいぶん朝が早かったけれど、眠気なんてどこに飛んでいってしまった。
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