scene 30

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「俺って家というか日本にいないこと多くて、アイツは離れている時間が多いからうまくいってるみたいなことをよく言ってたんだよ。俺はそれを鵜呑みにして、自由気ままに旅行したり浮気したりしてたわけ」 なんとなく、そんな泰輔さんの姿は想像できてしまう。 「そろそろ落ち着こうかと思った二十八のときに、別れようって言われてさ。そりゃあショックというか意外だったけど、円満に別れたんだ。水島と付き合い出したのは、その二、三年後。聞いたときは驚いたけど、別に奪ったとか奪われたとか、そういうこともなく、くっついたってわけ。だから、俺と別れてからも、水島と結婚してからも、みんなうまくやってたんだ」 うまく関係を築くことなんてできるのだろうか。 「でもなあ、俺は水島が引き受けた責任を感じてるんじゃないかと思ってる。彼女を放り出せないっていうか」 根拠はないけれど、それは違う気がした。
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