1191人が本棚に入れています
本棚に追加
/274ページ
泰輔さんと話していたら、気持ちが落ち着いてきた。
さっきまでは、風の気持ち良さも気にかけていなかったけれど、ふと自分の中に区切りをつけると、この世界のいろんな音が聞こえてくる。
「諦めました」と私は言った。
「きっと奥さんが引っ越して来たんですよね。奥さん、仕事が忙しくてまだ函館に残ってたんですよね?」
「そうなの?」
「仕事かどうかは、はっきりと聞いたわけじゃないですけど」
「アイツ、仕事なんかしてたのかな? 」
「今頃、奥さんとうまくやってるんじゃないですか」
口に出してしまったらスッキリした。
「よしっ。思いっきり飲みに行くか」
いっそのこと、このまま泰輔さんとホテルにでも行ってしまいたい。
数少ない先生との思い出は、ピッタリと蓋をしてしまえば、もう二度と開かないだろう。
最初のコメントを投稿しよう!