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「ショウ」
呼び止められて振り返った瞬間。
胸に抱きしめられて、ふわりとオリエンタルな香りに包まれた。
JR新宿駅、東口交番前。
待ち合わせのメッカで出くわしたのは、思い掛けない人物だった。
「……エコ?」
「ピンポーン。正解でーす」
不思議なイントネーションの日本語が、上から降ってくる。
腕から逃れて顔を上げると、俺の友人は満面の笑みを浮かべた。
「なーにやってんの、ショウ」
「驚かせんなよ。……エコこそ何してんの?」
「クリスマスライト見にきたのー」
「え、まさかひとりで?」
「ひとりだよー。エコかわいそうでしょ?」
「……自分で自分を『かわいそう』って言わないの。クリスマスまでに頑張って可愛い彼女つくるって言ってたじゃん」
「んー。でもショウ、もうあと一週間もないよー」
「エコなら街でちょっと声掛ければ、彼女くらいすぐ出来るでしょ。頑張ってねー、応援してる」
「あー、ぜったい思ってないでしょ!」
エコは俺の頬を両手で包んだ。
ラテン系の明るいノリが体温にも作用するのか、エコの手のひらは寒空の下でも温かい。
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