Alegria

28/40
前へ
/43ページ
次へ
「もうおうち帰ろー? ショウ。あ、そうだこれクリスマスプレゼント。あんまり好きじゃないかもしれないけど、頑張って選んだ」 「俺に? ごめん、俺何にも用意してないよ」 「いーよ、ショウと会えたのが、エコにとってはプレゼントだから」  エコはふわりと俺の背中に腕を回した。  ぎゅっと体を引き寄せられて、冷たい唇が微かに耳に触れた。 「好き、ショウ……」 「え?」 「プレゼント渡せて良かった! ……バイバイ、ショウ!」  エコは言いながら立ち上がると、ブンブン手を振って駅の人混みに吸い込まれていった。 「エコ!!」  聞こえてるくせに、エコは一度も振り返らなかった。  俺は、エコからもらったプレゼントのラッピングを解いた。  中から出てきたのは、寒がりの俺にぴったりな、手に持っただけでも温かさを感じるカシミヤのニットだった。  ありがとうも伝えられないまま、クリスマスは終わった。
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!

76人が本棚に入れています
本棚に追加