第1章

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 もちろん、おばあちゃんもだ。  そうやって、みんな家族になっていく。  家庭(ホーム)を築き、守っていくのだ。幸せになっていくのだ。  低く張りのあるエンジン音が響き、黒塗りの社用車が門前に停車した。 「おはよーございます、社長!」  助手席から飛び出してきたのは、いつもどおり秘書の水元だ。 「お迎えにあがりました、て……、なになさってるんですか、こんなとこで!?」  水元はすっとんきょうな声をはりあげた。  それもそうだろう。史彦は昨夜と同じスーツだが、一晩外で過ごしたせいでしわだらけだ。しかも足元は壊れかけた女物のサンダルをつっかけている。美晴も慌てていたせいで髪もぐしゃぐしゃ、悠理はパジャマのままだ。  三人は一瞬、互いに顔を見合わせた。 「えっと……、ウチの子がやっぱり世界で一番可愛いって、みんなで確認してたんです!」 「……はあ?」  水元はあっけにとられて、意味も分からず間抜けな相槌を返すしかなかった。 「水元、少し待て。着替えてくる。今日の予定は車の中で聞く」  史彦が立ち上がった。その時にはいつもどおりの、有能で怜悧な大企業のCEOの顔になっていた。 「あ、待って、朝ご飯! ちゃんと朝ご飯食べないと、一日しっかり働けませんよ! 今、おにぎり作ります。持ってってください!」  美晴の言葉に、水元がきらっと目を輝かせた。 「お前も欲しいのか。図々しいやつだ」 「三個も四個も大差ありません。すぐ作りますから、待っててくださいね!」  美晴はぱっと駆け出し、玄関へ向かった。  その途中、素知らぬ顔で先に家に入ろうとしていた悠理の首根っこをつかまえ、 「坊ちゃんは先にお部屋に行って、布団を干してきてください!」 「ちぇーっ!」 「自分でしたことは、ちゃんと自分で責任とるの!」  ぶつくさ悪態をつきながら、悠理は自分の部屋へ向かって歩き出した。  長い廊下の途中で、ふと立ち止まる。 「……お父さま、ちゃんと約束守ってくれた」 「え?」 「ぼくの七歳の誕生日までに、新しいお母さまを連れてきてくれるって、約束」 「坊ちゃま……」  いや、もう違う。悠理くん――悠理、だ。 「でも、半分だけね」 「え?」 「だって美晴、若いけど、美人でも優しくもないもん。だから半分だけ!」  そして悪たれの可愛い天使は、もう一度美晴に向かってあかんべーっとやってみせた。
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