プロローグ

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プロローグ

どうしようかと悩みながらのろのろと歩いていたにも関わらず、気づけばあっという間に店の前。 自動ではなく、手動の扉。開くと心地のいい鈴の音が鳴った。 家のポストに、ちらしが入っていた。 『喫茶hideaway ウエイトレス募集しています』 正直私は物を運ぶとか接客は得意じゃなかった。 いいのは場所だけ。 私の家からは結構近いところにある。 "hideaway" 日本語でいえば「隠れ家」。 聞いたことはあった。そして、一度だけ目の前を通ったこともあった。 女の人はいないっぽいけど、数人の、イケメンの男の人たちがいるって。 人気があるから人手が足りないのだろうか。 そう思っていたけど その喫茶店に一度行ったことのある友達の言葉。 【なんかおかしいんだよね】 おかしい? 言葉ではうまく表現できないらしい。 とにかく、どこかしら怪しい、謎めいた感じがあるとか。 そんなことを言われてしまうと、怖さもあるけれど気になって仕方がない。 チラシを片手に、様子だけでも見てみるか。 そして私は来たのだ。 ここ、hideawayに。 「いらっしゃいませ」 開けてすぐ、数人の男の人の声が聞こえた。 「どうぞ」 入ってすぐ右横にはカウンター。そこには一人の若い男の人が立っていた。 黒い短めの髪に、スラッとした体型。 かっこいいと、心の中で素直に呟く。 軽く会釈して、とりあえずテーブル席に座る。 雰囲気は、落ち着いていてなかなかいい。 「いらっしゃいませ」 少し挙動不審にあたりを見回してる私のもとに 小柄な男の人が水を持ってきてくれた。 背が小さくて目が少しくりっとしてる。 カウンターにいる人といい、この人といい、好感が持てる。 友達のいう、【怪しい】なんていうのは微塵も感じなかった。 ここから少しだけ厨房の方も覗ける。 チラチラ見える人たちも、パッと見は変わったところなんかない。 うん、この段階では、謎もなければ怪しくもない。ごく普通。 むしろ執事喫茶みたいな。 そんなとこに来ちゃったんじゃないかと錯覚するぐらいで、もっと早くこの喫茶店に来ていればよかったという後悔と同時に、得をした気分だった。
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