第1章

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「出て行くな。恭輔ならここに呼べ。もっと、一緒に居られる時間が少なくなるじゃないか…」  御形、顔が真っ赤なのを、湯のせいだと言わんばかりにタオルで隠す。  男同士で赤くなるなんて変だが、俺と御形は幾度も、キスまではしている。恋人とは言えないが、友人とも違うような関係だ。  俺は、御形とこれ以上の関係を望んでいないのかもしれない。だから、いつも、避けてしまう。 「風呂、上がる」  御形が、風呂から出て行った。  夕食を取ると着替えて、仕事に向かう。バイクに乗り、直接現場まで行くつもりだ。その前に、蓮の占いの館に寄っていた。  金を貰わなくても、仕事は仕事、甘い考えで居ると痛い目に遭う。やはり、霊が見える専門家は必要だった。 「蓮、居る?」  客が居ないのを確認し、中に進んだが、男の声が聞こえていた。  真紅のカーテンを過ぎると、蓮が蝋燭を消し電気の照明に切り替えていた。今日の仕事は、終了したのかもしれない。 「黒井!」  背後から何かが抱き着いてきた。 「俺のこと忘れたのか?黒井」  後ろから俺の頬に、ちゅばちゅばとキスをしてくる。そんな人物は、一人しか居ない。 「玲二さん!」  祖母の元で、昔修行していた人だった。余りの素行の悪さに、祖母は手を焼いたが、俺には兄貴のような人物だ。春日の元でも修行していて、蓮とも知り合いだった。 「黒井、家の祓いだっけ?よかったら、この玲二に頼んでやって」  連が、着替えながら話していた。 「金にならないですよ」 「それならいい。玲二、俺に借金があるから。この前、玲二に、ホテルに泊まりながら金無いから払っとけと呼び出された。それに、俺、黒井には怪我させたからな、その詫びとして受け取ってくれ」  黒装束に、目の下に隈。いつもの玲二だが、どこか影が濃くなっていた。そもそも、玲二は霊に対しては無敵に強かったが、長く霊能力者をやってはいけない理由があった。 「玲二さん、俺、これから仕事ですが、母と会いますか」  玲二は、ほんの少し考えたが、軽くうなずいていた。 「悪くない」  俺はバイクで、玲二は車で現場に向かった。霊に憑かれたという少女が居る家。  ごく普通の住宅街の民家で、少女が髪を振り乱し、紐でまかれて居間に居た。  母が祈祷を捧げていた。俺が、水を撒き、過去を見ようとすると、玲二が静止した。 「必要ねえよ」  玲二のきつい釣り目が、更にきつくなった。
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