序章 彼女は突然言った……

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ

序章 彼女は突然言った……

俺がこの私立白波学園に入学して、早くも二回目の春を迎えた。   校庭の桜は満開となり、新しく入学した生徒を温かく見守っているかのようだ。 「ねえ、幸人。 購買のパンって何であんなに種類が少ないのかしらね」      そんなことを考えていると、机にうなだれて何とも暇そうにしている少女が、不意にそんなことを聞いてきた。  背中まで伸びた艶のかかった美しい黒髪のロングヘアー、前髪を留めているキュートなピンクのヘアバンドが特徴的な彼女、柏木美嶺(かしわぎみれい)は何とも退屈そうに俺を見ている。    「そんなの分かりませんよ。  購買委員会に言ってください」  そう俺が言うと彼女はむぅ……と言葉を漏らて、また机にうつ伏せになった。  与えられたら仕事(書類整理や生徒の没収品の確認なんか)をこなしながら、他愛ない雑談をする。  そう、白波学園風紀委員会は今日も今日とて平和である。  しばらくの沈黙が続いたあと、彼女は「よしっ」呟き、机に突っ伏していた上体を起こし、口を開いた。 「ねえ、幸人ぉ」 「何ですか委員長」  あぁやっぱり平和が一番だなぁ。  多分俺、平和の神様に愛されてる── 「私ね、そろそろ学園支配しようと思うのよね」 「……は?」  俺の平和が一瞬で崩れ去ったような気がした……。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!