0人が本棚に入れています
本棚に追加
「待ちなさいレイニーデイズ!」
「わ、あ、あぁ」
そしてこの長時間の逃走劇にレイニーデイズの方が心身共に限界がきていたのだろう、彼女の動きもだんだんぎこちないものへとに変わっていき、みるみるうちに二人の距離が狭まっていく。
「観念しなさい!」
「わ、分かった! 分かったからもう許してぇぇ……」
遂にレイニーデイズの方が白旗を上げた。へなへなとその場にへたり込むレイニーデイズだったが、さすがのアリスもまさか彼女がいきなりしゃがみ込むとは思っていなかったのだろう。
「わ、バカ!」
そう叫んでアリスも慌てて立ち止まろうとするがさすがに無理があった。勢いよくレイニーデイズにぶつかったアリスはそのまま派手にすっ転んだ。
しかも、場所が最悪だった。
二人は逃げ、追うことに必死で気付いていなかったが、彼女達はほとんど切り立った崖に位置する建物の屋根にいた。
当然、屋根に人が登ることなんて想定されていないし登ろうとする人間なんていない。
そこに転落防止用の柵などあるはずもなく――アリスは転んだ勢いのまま宙へとその身を躍らせていた。
「へ?」
「なっ」
互いにその事実に言葉を失う。そして、アリスはしばしの浮遊感に思考が停止するも、続いて訪れた落下の感覚に悲鳴を上げるのだった。
「きゃあああああああああああああああああああああああああ!!!」
そしてフェードアウトしていくアリスの声にしばし呆然としていたレイニーデイズだったが、非常事態に我に戻ると、何に対してか、一度大きく舌打ちするとなんの躊躇いもなく宙へと身を投げ出したのだった。
「いやあああああああああああ!!」
そして死を覚悟して泣き叫ぶアリスの元へ一瞬にして追いつくと彼女の体を強く抱きしめ、迫りくる衝撃に歯を食いしばった……――――
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
――――……アリスが意識を取り戻すと、彼女達は旧市街と呼ばれていた場所にいた。
「た、助かった、の?」
「じゃないと喋れないんだぜ」
アリスの独白に近かった問いにすぐ隣から聞き慣れた声が返ってきた。そちらに顔を向けるとそこには大の字になって空を仰ぐレイニーデイズが横たわっていた。
「いやー、満ち潮じゃなかったら死んでたぜ」
最初のコメントを投稿しよう!