怪盗レイニーデイズ

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 がるるるぅ!と唸り声すら聞こえそうな剣幕で立ち上がったアリスはレイニーデイズを追おうと壁に手をかけながら登ろうとするが、うまく登れず悪戦苦闘する。  そんなアリスをレイニーデイズは悪戯な笑みを浮かべて見下ろしながら、 「落ち着くんだぜ警部。花も恥じらう乙女がそんなかっこしちゃダメだぜ?」 「ふぇ!?」  レイニーデイズの言葉に頬を赤く染めたアリスはあまりに突然の言葉に何のことか理解が追いつかない。そんな彼女にレイニーデイズは「ちっちっちっ」と指を振りながら 「ちなみにお召し物は乙女チックかい?」  と。そう告げられたアリスは「何をばかなことを!」と怒鳴り返そうとしてようやく目の前の怪盗少女が何を言っているのかが分かった。 「わ、ひゃっ、わひゃ!?」  そして慌ててスカートを抑え、バランスを崩し地面に尻もちをつくアリスを愉快げに笑い飛ばすレイニーデイズ。……自分だってドロワが丸見えなのは気にもしていない。 「それじゃおさらばだぜ!」 「……」  そうして逃げおおすレイニーデイズ。だがアリスの反応はない。地面に座り込んだまま俯いている。 「あ、あの、警部?」  それがなんだか恐ろしくあるのだが、リデルは上官の身を案じて恐る恐る声をかけた。 「――た?」 「は、はい?」  ぽつり、と。上官が何かを呟いたのは分かったが、あまりにも小さな呟きだったのでうまく聞き取れなかったリデルはそんな生返事を返した。  すると、アリスはぐるん!と勢いよく首をこちらへと振り向けながら叫んだ。 「み、見た!?」 「え、あ、その」  正直な話、その危険性を危惧して警部を止めようとしたのだが、そのおかげでバッチリ目に焼き付けてしまったリデルとしてはなんと言ったものか。  嘘でも「見ていません」と言えばいいのだが、今の上官の目には嘘すら許さないといった強い意志が垣間見えた。  だから、 「い、いえ! 黒色だなんて分かりませんでした! ――あっ」  その気迫に圧倒されなんとも中途半端で致命的な答えを返してしまったとしても彼に非はないだろう。  自分の致命的な発言に気付いたリデルは「いえ」だの「別に」だの色々と言い訳を取り繕おうとしていたのだが、すっくと立ち上がったアリスにビクリと肩を震わせて黙り込んでしまった。 「見た、のね?」 「は、ひゃい、申し訳ありません!」
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