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「レイニーデイズ!」
「……おっ、警部さんじゃん?」
「今度こそとっ捕まえてやるんだから! そこで待ってなさい!」
「だーかーらー。『待て』と言われて待つ奴は犬ぐらいだぜ?」
「それじゃ犬が出来ることも出来ない貴女はだめな子ね!」
「え? あ、確かにそう言われるとそうかも?」
いつもとは打って違ったアリスの反論にレイニーデイズが言われてみればと小首を傾げる。
それにつられるようにしてしゃらりと揺れた金髪が鬱陶しくなったのか、それを何気なく掻き揚げた彼女はいつの間にかアリスの姿が見えなくなっていたことに気付いた。
「あ、あれ? どこに消え――
「ここよ、レイニーデイズ」
――うげ!?」
ぐわし、とレイニーデイズの立つ屋根のすぐ傍を白い腕が掴んだ。それがアリスの物だと気付いたレイニーデイズは彼女がいつもと気合いの入れようが違うと感じ取ったのか、じりじりと後退していく。
「な、なんでそんなに気合入ってんの? もしかして、昨日のこと怒ってる?」
なんておずおずとした様子で聞く姿を街の人々が見るのは初めてだ。そしてそんな観衆の目も気にせず、レイニーデイズと同じ屋根の上に立ったアリスはにっこりと笑みを浮かべ、
「私もそろそろ本気を出そうと思っただけよ。でも、そういえば昨日のこともあったわね。その分のお仕置きもしなくちゃ、ね?」
「ひっ!」
挙句にはアリスの浮かべる笑みに邪悪なものを感じたレイニーデイズが年相応の可愛らしい悲鳴まで上げたのだから観衆の思いは「遂にレイニーデイズもお縄に着く時か」から「逃げて。レイニーデイズ超逃げて」と言った風にレイニーデイズの身を案じるものへと変わっていた。
「お」
そしてしばしの間続いた対峙(というにはアリスの方が気迫で圧倒していた)にレイニーデイズが先手を打った。
何事かを呟いたかと思うと、ぐるん!!と百八十度回転しアリスに背を向けるや脱兎の如く逃げ出した。
「おさらばだぜぇぇぇえええええええええ!」
「本気を出すって言ったでしょ? 待ちなさーーーーーーい!」
そしてそれを予測していたアリスも駆け出す。屋根の上であるにも関わらず駆ける二人の少女は一切の恐怖も不安も抱いていないようで、屋根から屋根へと軽快に飛び移っていく。
「待ちなさいレイニーデイズ!」
「な、なんで今日はそんなに怒ってんだよぉ!?」
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