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「怒ってない!」
しかも逃走劇を繰り広げながら会話をしているという有様である。
レイニーデイズは涙目になって情けない声で追走するアリスに訴えかけるもアリスは短く怒鳴りつけるだけで彼女の真意が測れない。
「こ、こーなったら最終手段を使うぜ!」
「最終手段?」
「にゃんこ部隊、しゅうごーーう!」
レイニーデイズは叫ぶと同時、アリスに向かって何かを投げつけてきた。それを腕で受け止めたアリスだったが、それは何かを溶かした液体だったらしい。なんとも言えない臭いがアリスの鼻腔をつく。
「なに、これ?」
何かしらの毒物だったりするのだろうか、そんな考えが一瞬脳裏によぎったアリスだったが、レイニーデイズがそういう少女じゃないことをすぐに思い出しその考えを打ち消した。
そもそも、レイニーデイズはこれを投げつける前に何と言っていた?
「にゃんこ……これ、もしかして!」
「ふっふっふっ、ご名答なんだぜ。 さぁ、行け、にゃんこ部隊!」
匂いの正体に気付いたアリスにレイニーデイズはようやく落ち着いたのか、いつもの悪戯な笑みを浮かべほくそ笑んだ。
そしてどこからともなく「にゃーん!」という鳴き声が鳴り響き――軽やかな動きで猫達がアリスへと飛びかかってきた。
「ふっふっふっ、動物――特ににゃんこ好きな警部に果たしてこの部隊が突破できるかな?」
「あなた……!」
レイニーデイズが投げつけたそれはマタタビを溶かし込んだものだったらしい。
街中の至る所にいる猫達が目敏くその匂いを嗅ぎつけ、マタタビの匂いを纏ったアリスへと飛びかかるや、すりすりと体を擦り付けたり頭に乗っかったりし始めた。
そんな猫まみれなアリスの様子を実に愉快そうに見つめながら勝ち誇るレイニーデイズ。
気のせいか、その目に羨望の色が混ざっていた気もするが、アリスは自分の頭に乗っかり鼻をひくつかせていたりする猫を引きはがしたりしながらレイニーデイズを睨みつけた。
「お? な、なんなんだぜ?」
その視線にびくつきながらも逃走する素振りがないのは自身の勝利を確信しているからだろうか。そんなレイニーデイズにアリスは足元にすりつく猫も気にせず一歩踏み込みながら
「あなた、バカよね」
「うぇ!?」
言い放った。どころかツカツカと歩み寄りながらレイニーデイズへと詰め寄る。
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