怪盗レイニーデイズ

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「確かに猫は好きだしちょっともふりたくなったし抱きしめたいしですごく嬉しいけど――あなたを捕まえるのが先よ」 「す、すたこらさっさー、だぜ!」 「あ! こら!」  にゃんこ部隊、敗北。  自身勝利を確信していただけにレイニーデイズのショックは大きかったらしいが、それでも危ういところで我を取り戻し逃走を再開した。  それをアリスは慌てて追いかけようとし、まだ自分の足にすりよる猫に気付くとそれを優しく丁寧に引きはがしついでにほんのちょっと抱きしめると満足げに一つ頷いて追走を再開した。 「うおりゃああああああああ!」 「っ!」  レイニーデイズは屋根から屋根へ飛び移る――と見せかけ偶然真下を走っていた農家だろうか、大量の干し草を積み込んだ馬車の荷台へと飛び降りた。  それを悔しそうに見つめるアリスへとにこやかな笑みと共に手を振りながらレイニーデイズが馬車を飛び降りる。  なんとか後を追わねば、と焦るアリスだがそう都合よく干し草を積んだ馬車が通るわけもない。  そしてレイニーデイズは悠々とした足取りでアリスの視界から去って行った。 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ 「ふぅ、なんか今日のあいつは怖すぎるぜ……」  彼女、レイニーデイズは入り組んだ小道をすいすいと進むと逃走劇で腹が減ったのか、今回の収穫物であるパンの入った紙袋から一番小ぶりなパンを手に取るとほんの一口、それこそ啄むといった表現の方がしっくりくるぐらいの量を口にすると「ふぅー」と額を拭った。  その、拭ったばかりの額にぽつり、ぽつり、と。  一滴の雫が零れ落ちたかと思うと、それは次第に勢いを増してたちまち彼女の衣装を濡らしていくほどの激しさへと変わっていった。 「げっ、久々の雨じゃん!?」  今日の収穫物はパン。いつもなら別段気にする必要のない雨も今回ばかりは急がなければいけない。  レイニーデイズは紙袋から飛び出すバゲッドは仕方ないと割り切って袋の口をぎゅっと握りしめると貧民層の住人達の住む区画へと早足で駆けていった。  そうして大通りへ出たレイニーデイズの眼前に。  見覚えのある少女が不敵な笑みを浮かべて立っていた。 「――へ?」  あまりにも堂々と立ち尽くしているものだからレイニーデイズは一瞬幻覚か何かかと思い自分の目をぐしぐしと擦った。しかしその少女、アリスの姿は依然として消えない。
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