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「やっと姿を現したわね、レイニーデイズ」
突然の雨に彼女も用意が出来ていなかったのだろう、アリスは濡れて頭に張り付く金髪からぽたぽたと雨水が滴るのも気にせずにそう言い放った。
「な、なんで先回り出来たんだ!?」
レイニーデイズの驚きはつい数分前の逃走劇で捲けたものと確信していただけが理由だけではない。彼女は万が一のことを考えて入り組んだ道を進んできたのだ。それがまるでここに出ることが分かっていたかのように先回りされていたのだ、戦慄して当然だろう。
そんなレイニーデイズにアリスは心底サディスティックな笑みを浮かべると(共に行動していたリデルすら恐怖に引きつった笑みを浮かべていた)まるで不出来な生徒に訓辞を垂れるように語り始める。
「人間は一見テキトーに動いているように見えて、その無意識の領域では慣れ親しんだ、安心出来る行動を選択しているって聞いたことないかしら? 私はそこに注目して今までの貴女の逃走ルートや貴女の昔っからのクセ、考え方、好みから色々な答えを導き出したわ。まさかこんなに上手くいくとは思っていなかったけどね。人間の無意識がすごいのか、貴女が単純なのかは知らないけど、どうでもいいわ。結果良ければ全て良し、よ」
「い、言ってることがちんぷんかんぷんだぜ」
「まぁ、つまりは私からは逃げられないってことよ! 今度こそ覚悟するのねレイニーデイズ!」
「お、お断りするぜ!」
「逃げても無駄よ!」
大慌てで元来た道へと飛び込むレイニーデイズ。しかし今度のアリスはそのあとを急いで追おうとはしなかった。
それは彼女が編み出した無意識の選択肢がこうやって効果があるものと実証され余裕が生まれたからなのか、こうやって追う素振りを見せないことでレイニーデイズの無意識に干渉しているのか。とにかくこの上官だけは敵に回したくないな、と部下のリデルは内心で溜息を吐き出しながら次の指示を仰いだ。
「警部、どうします」
「……私は彼女を追うわ。貴方は万が一の可能性を考えてここに待機」
「待機、ですか。別の場所へ向かうでもなく?」
レイニーデイズを追う警察の一員として疑問を投げかけるリデルにアリスはすでに小道へと足を踏み入れながら返事を返した。
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