怪盗レイニーデイズ

9/13
前へ
/15ページ
次へ
「犯人は現場に戻る……ってわけじゃないけど、あの子の場合、『まさか自分が同じ場所に戻ってくるなんて思うまい』とか考えてもおかしくないもの」 「はぁ、なるほど」  その説明に正直納得は言っていないようだが、恐らくレイニーデイズという《少女》について誰よりもよく知っているであろうアリスの言うことだ、可能性として無きにしも非ずといったことなのだろう、とリデルは上官の言葉を信じてその場に待機することを了承すると「ご武運を」となんとも仰々しい言葉を付け加えるのだった。 「ふふ、今日こそこの鬱憤を晴らしてやるわ」  振り返ってそんな言葉をニヒルな笑みと共に呟く上官に彼は思わず「レイニーデイズだけに晴らすのですか」とツッコミそうになってその言葉をかろうじて飲み込んだ。その間にアリスは小道へとすでに消えてしまっていた。 「にしても、上も黒なんですか……」  無意識にリデルの口から零れた言葉を思うと、それでよかったのかもしれない。アリスも、彼も。特にリデルは身の安全的な意味で。 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ 「レーーーイィィィイニーーーーーデェエエーーーーイズ!!!」 「ぎゃー!? いくらなんでもしつこすぎるぜ!?」  二度目の逃走劇。再び屋根の上を走ることで一刻も早くアリスから逃げようと目論んだレイニーデイズだったが、それが災いした。  レイニーデイズがそう出ることを最初っから予想していたのだろう、すでに他の建物の屋根によじ登っていたらしいアリスがすごい剣呑な雰囲気を纏いながら走り寄ってきた。  ……雨で張り付いた髪も相まってちょっとしたホラーになっているのにはきっと本人は気付いていない。  しかしそんなホラー作品の化け物もかくやなアリスの様子に完全に怯えた様子のレイニーデイズは今まで以上の逃げ足の速さを発揮していた。 「逃がさないわよ!」  そして今日こそは捕まえる、捕まえられるといった興奮が彼女から疲れといった類のものを忘れさせているのか、アリスはまるで鼠を追う猫のような俊敏さでレイニーデイズを追い詰めていった。 「ひ、ひぃ!」  どんなに距離を離そうと変則的な動きを交えたりフェイントをかましたりして逃げてもそのことごとくに対応して着実に迫ってくるアリスにレイニーデイズの口から本日何度目かも分からない悲鳴が上がる。  雨で断定はできないが、今の彼女はきっと泣いているに違いない。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加