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それは、
しびれたような、少し、感覚が鈍くなったような、不快感だ。
例えるなら、眠りに落ちる間際の倦怠感に、似ている。
刻一刻と、強くなっていくその感覚とともに、心が絶望の色に染まっていく。
「この薬に使っているカプセルは、谷田部製薬で開発中の新製法でね。唾液で溶けずに胃液で瞬時に溶解する。だから、飲んですぐに薬効が現れる、優れものなんだ」
耳元に落とされる声が、遠く近くに、こだまする。
立っていられずに、膝が、ガクリと下に落ちてしまう。
「……と、もう、効いてきたのか。空きっ腹にワインの相乗効果か。あまり効きすぎると、つまらないんだが。仕方がないな」
私を抱きかかえながら、
蛇が、勝ち誇ったように、ほくそ笑んでいる。
押し退けようとする両腕に、力が入らない。
――ああ、ダメだ。
これ以上、抗えない。
震えるまぶたが、静かに下りていく、
まさに、その時だった。
――ブルル、ブルルと、
低い、携帯の着信を知らせる振動音が、どこかで聞こえた。
否、振動を感じた。
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