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――キス……マークを、付けられ……た?
まるで、所有印を、刻み込むみたいに、
喉元から、胸元へ、
何度も痛みが走るたびに、カッと、頭に血が上っていく。
――気持ち悪い。
――悔しい。
なのに、
私は、動けない。
逃げ出したいのに、
ソファーの隅に、抑え込まれ、
四方八方、逃げ場を封じらて、体が、どうにも動かない。
「君が、私の手に落ちたと知った時の、あいつの顔が見ものだな」
男は哂う。
獲物を屠る、蛇のように。
――課……長。
谷田部課長――。
私にだけ向けられる優しい笑みが、絶望の色に浸食された、脳裏をよぎる。
――だめ。
だめだ。
あきらめたら、
本当に、そこで終わってしまう。
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