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自分では、かなりの、好ダッシュだったと思う。
でもおそらく、現実には、逃走時間は、数秒ほど。
後ろから伸びてきた腕に、あっさりと捕獲され、
痛い思いをしただけで、状況は、振り出しへ戻ってしまった。
場所に至っては、ソファーから、数歩も離れていない。
――運動神経、なさすぎだろう、私。
かなり、へこみながらも、気力を奮い立たせ、
『逃さないぞ』、という気持ち満々にしっかり腰に回された右腕を、両手で外しにかかる。
「ったく、手間をかけさせてくれる」
敵は、唸るように吐き捨てた後、
空いた左手で、自分の胸ポケットをまさぐると、小さな白いカプセル状のものを取り出し、口に含み、
テーブルの上に、手を伸ばしたかと思ったら、ワインボトルをひっつかんでラッパ飲みしはじめた。
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