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ベストのポケットに入れてある、携帯電話に、着信している。
――課……長?
眠りに引きずりこまれる寸前の、思考の片隅で、その相手が課長だと確信する。
――でなきゃ。
でて、助けを求めなきゃ……。
最後の気力を振りしぼって、そう思うけど、
悲しいかな、しびれた腕が、うまく上がらない。
代わりに、伸びてきた武骨な手が、ベストの中の携帯を取り出した。
「……ふん。あいつか」
プチリ、と、受信ボタンを押して、
最後の頼みの綱を取り上げた敵は、上機嫌で会話を始めた。
「何の用だ? あいにく、彼女は取り込み中で出られないから、私が用件を聞こうか?」
「う……」
ダメだ。
声を上げようとするけど、音声にならない。
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