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「人聞きの悪いことを言うな。別に、無理やり連れ込んだわけでは無いさ」
尚も、続く、楽しげな会話を聞きながら、もう、溜息しか出てこない。
「迎えに来る? ああ、かまわんよ」
――課長……。
電話の向こう側には、課長がいるのに。
私には、もう、声すら上げられない。
「そこからは、どんなに急いでも1時間はかかるだろう? せいぜい事故を起こさないように、気を付けて来るんだな。父親の二の舞はしたくないだろう。じゃあな」
――プチリ。
無情にも、
最後の希望の灯は、受信終了を告げる音とともに、消えてしまった。
「白馬の王子様は、今日は、眠り姫になった母親の見舞いの日でね。大事なお姫様の窮状に気付くのが、少しばかり遅かったようだな」
喉の奥であざけるように笑いながら、
男は、私を抱き上げたまま、ゆっくりと部屋の奥へと足を進める。
課長の部屋と同じ作りなら、おそらく、そこにあるのは、ベット・ルーム。
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