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万事、休す――
万策、尽きてしまった。
身体が思うように動かないのでは、逃げようがない。
ああ、嫌だなぁ。
こんな、勘違い野郎の蛇親父に、好き勝手されてしまうなんて、
いくら、身から出たサビとは言え、我ながら、哀しすぎる。
それに、たぶん、
きっと、課長に、いっぱい、迷惑をかけてしまう。
谷田部課長、
ううん、東悟。
……ごめん。
おバカな元カノで、
ほんっとうに、ごめん……ね。
『高橋さんっ!』
――それは、願望が生んだ、空耳だったのか。
意識が、闇に落ちる寸前、
私を呼んだのは、聞き覚えのある、声。
ここに、いるはずのない人の、声だった――。
―第16話へ続く―
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