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「風見さん、ツマミでも切ろうか」
「いや、折角だから、五・六貫おすすめで握ってください」
大将の声で現実に戻されて、ツマミ用に握りを注文する。
シメのこだわりと言うよりは、寿司のこだわりだが、寿司屋ではツマミは頼まずに握りで酒を飲む。
常温の日本酒を飲みながら、握りをツマミにちらし寿司を待つ。
これも人としての違和感を、感じるかもしれないな。
秋の声が完全に聞こえ始め、日中に鳴く蝉の種類からも、それを感じ始めていたある日。
駅のホームに降り立った。
佐々木くんの姿は、視界の範囲内にはいなかった。だがいつもの駅と、変わらないと感じたのは一瞬だけだった。
俺が降りたホームの向かいのホームに列車が入り、間もなくして見慣れないタイプの集団が、改札方面に歩いていくのが目に入る。
ぱっと見、十代後半から三十代の男女だが、比率的には女性が多い。
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