降らない雨

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  ざざーっと、先ほどまで流れていた雨の音がいやに耳に残った。   今日の夕方にでも抜けるらしい風を纏った台風は、この部屋の窓を容赦なく揺らし、たくさんの雨を降らせた。   それは、大きな塊となって窓を伝い落下を始めている。 そんな、日常に転がる光景を広く明るい視界に映しながら、俺もあの『雨』の仲間入りができないだろうか、と。酷く道徳的なことを考えてしまうのは、半年近く同じ屋根を共有している小説家志望の恋人のせいと言っていいだろう。 いつも小説の創造性のためと言い、女顔負けのその顔で本気とも冗談ともとれぬ甘い愛を囁いてくるのだ。   本当に勘弁してほしいものである。 照れているなどという、もの以前の問題で。
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