降らない雨

5/16
前へ
/23ページ
次へ
なんとなく頬が熱い。 原因は、わかっているけれど。 俺が羞恥心のせいで素直な気持ちを言えないことも、感情を表に出すのが下手で無口になってしまうことも。 たった一年前に出会った彼は、きっと全てを知っている。 すべてを分かった上で、大丈夫と優しく綺麗に笑うから、俺はいつまでもこの恋人に甘えてしまうのだ。 酷く心地がいい彼のもとに。 「んー、また黙り?」 「あっ......いや。」 「まぁ、いいけど。」 「......ぇ。」 小さく声が漏れた。 普段の彼とは違うあっさりした態度に、久しく感じていなかった嫌な焦りが、徐々に自身の心を占めていく。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加