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「え、どうし......。」
焦りのままに、口を開く。
「あれ。言ってなかったっけ?」
そうあっけらかんと言い放ち、椅子から立ち上がった彼は、その細身の身体を薄手の黒のコートで包んだ。
「兄さんが今月結婚するんだよね」
「結婚?」
「うん。三年付き合った彼女とね。それで、家の顔合わせ? みたいのがあるらしくて。......うん、よし」
そう言葉を切り、手を離した場所にはいたって普通の蝶々結び。
だけど、それは少し。
寂しげにショボくれているように見えた。
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