降らない雨

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「奏くん......?」 微かに揺れる甘い声が、耳をうつ。 触れあう布越しの肌を伝い、彼の鼓動が伝わってくる。 「奏くん? どうしたの。具合悪いの?」 未だ現状を把握し切れていないような彼の様子に、僅かな苛立ちが心に燻る。   お前は俺と離れてもなんとも思わないのか、と。 気を緩めた瞬間。 そんな理不尽な問いが口をついて出てきそうで。  閉じた目を開けることが出来ない。 と。 ぽつ、ぽつと。 すぐ傍から聞こえてきたのは、 「あめ、かな?」 再び降り出したのであろう雨の音。
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