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「雨、か。」
その単調でいて静かな音に、心はだんだんに落ち着きを取り戻していく。
開いた瞼とともに緩んだ腕。
それでも彼は、その腕のなかを抜け出すことなく、小さくため息をついた。
「はぁ、雨降ってきちゃったなぁ。止んでるうちに帰りたかったのに......。」
そう言い、うつむく彼に覚えるのは罪悪感以外のなにものでもない。
落ち込む彼に対し、それを喜んでいる俺自身。
理由は酷く明白だ。
「んー、もうちょっとしてから出ようかな。濡れるのいやだし」
そう言葉にした、彼はつま先立ちになり、こちらの顔を下から覗き込む。
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