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第3章
『せんぱい……お水。口移しでちょうだい』
顔を撫でる指が離れ、後頭部に手が回され少し持ち上げられると、先輩の唇が俺のと重なってチョロチョロとお水が入ってきた。
これっぽっちじゃ足りなくて『おかわり……』って言ったら俺を置いてきぼりにしてどっかに行っちゃった。
夢の中で独りぼっちになるなんて、こんな夢なら覚めちゃえ━━━!!
ぱちっ。
目を開けると、先輩のベッドに一人きり。
見渡しても誰もいない。
『せんぱぃ……淋しいです……』
虚無感に襲われながら、横にある先輩の枕を抱き締めると、先輩の臭いがした。
ラッキー!!
夢から覚めたのは残念だけど、災い転じて福と成す。
枕元にさっき箱ティッシュ置いたのは過去の俺。でかした!
熱があるのに、さっきから息子が暴れん坊で……ジーンズの中で苦しんでいるんです。
枕を抱え、ティッシュを握りしめ、いざ暴れん坊を成敗だ━━。
━━……って、何でこのタイミングで入ってきたんですか?
ちょうど、あとちょっとのところです。
あとちょっとで………終わるのに……
「日高さん、凄い汗。息も荒くなってる」
走り寄る先輩の知らない布団の中で、己をぎゅうぎゅうに握りしめ、俺は焦りに焦っていた。
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