第1章

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私が指名のお客様に入客している間、リューマは、受付のフロントにいて、ご来店のお客様のご案内から、お会計を担っていた。 朝から生理がきたのもあって、 痛み止めを飲んだけど、下腹部の鈍痛とだるさに襲われながら、施術をこなしていた。 「ルイさんて、本当にハンサムよねぇ。どうしてタレントを辞めてしまったのかしら?あの容姿でもったいないわよね。」 鏡越しに写るリューマを見ながら担当のお客様が、私に疑問を投げかける。 お客様には、私たちが夫婦だという事は伝えていなかった。 「やっぱり、報道されたように恋仲だった方が自殺されたのがキッカケだったのかしら。 ルイさん、繊細そうだもの」 目は鏡越しに写るリューマを捉えながら声を小さくして言う。 マダムはこの手のゴシップネタの話が大好きのようだ。 本人が目の前にいるから余計に興奮してしまうのか、目に好奇な色を浮かばせている。 実際、繊細でもないんだけど……。 妻の私もその件に関しては何も聞かされていない。 多額の慰謝料を払っていた事実があるから、 泥沼な三角関係だったのは間違いないようだけど……。 でもリューマの主張は 結菜さんとの関係は私と出会ってからはないと言っていた。 鏡越しに映って見えるリューマは退屈そうにアクビを噛み殺している。 しばらくすると、ヨシがリューマのそばに歩み寄って何やら話を始めていた。 二人が時々可笑しそうに笑っている。 硬派な男気のあるイケメンのヨシと 柔かいフェミニンなリューマは 対照的な魅力で溢れていて、 目を奪われてしまうほど、二人は格好良い。 「須田さんは、専属のヘアメイクだったんでしょう? ルイさんのプライベートの情報は入ってこない?」 「そうですね……。 彼は芸能界を決別してここにいますから、私もあまり存じ上げません」 私は曖昧な返事をして話題を変えた。 結婚してる事も話していないから、 リューマの話題はなるべく避けたかった。
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