第1章

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「さっき楽しそうにヨシと何話してたの?」 一人目の指名のマダムをお帰ししたあと、受付にいたリューマに訊いた。 「ヨシと? ボーイズトークだよ。それより、今帰ったマダムからチップもらっちゃった」 リューマがポッケから5000円札を取り出した。 「えっ?! もらっちゃったの?」 「いいですって言ったんだけど、ポケットに無理矢理突っ込まれて、すぐミユキと外に出て行っちゃったから。 貰っちゃまずかった?」 リューマは困った顔して笑った。 「まずい事はないけど……まっいっか。リューマの事気に入ってるっぽかったし。好意で頂いておいても」 ただカウンターにいただけのリューマに5000円もあげるなんて、 ずるーい。 本当は施術した私にくれるもんじゃない? 「はい、ミユキが貰っておけばいいじゃん。ミユキが担当したんだから」 リューマが5000円札を差し出した。 「……いいよ、別に。」 「夫婦なんだから同じ事だろ?」 「そうだけど」 「……にしても、あのマダム、ホストクラブ行ったら、散財しそうだな。」 「やっぱりリューマはそうゆう素質があるんだね」 「オレって一生カネに困らない運命の星で生まれたのかも」 「そうじゃないよ、華がある今だけだよ!残念でしたー」 リューマみたいに容姿だけでものを言わせられるなんて 同じ人間として自然とひがみ根性が芽生える。 「ミユキ、なんかついてる」 リューマが私の胸元を指すから「?」って顔を下向けたら 向けた先から鼻ピンされた。 「イタッ」 リューマが『してやったり』の憎らしい笑顔で私を見る。 「華があるうちに稼いでおかなくっちゃね」 「もう!痛いでしょ!」 不意打ちにされた子供じみたイタズラに、腹ただしさが込み上げる。 生理中で、僅かな生理痛とイライラで、私はすぐに不機嫌になって、プイッと顔を背けるとリューマから離れてバックルームに入って行った。 そうするとヨシが休憩中で食事を取っていた。
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