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私は、どうしようもない感情に囚われて、ヨシの顔を仰いだ。
涼しい顔して爪楊枝をくわえてるヨシとしばし黙ったまま見つめ合う。
「……何思い巡らしてんの?
どうやってオレとイチャついてリューマをヤキモチ妬かせようとか?」
爪楊枝を口から離して、食べ終わった弁当に放り投げると、口元に笑みを浮かべながら指を顎に当てた。
私は頭を左右に力なく振る。
「全然違うし。
いらぬ労力を使ってる自分に脱力してたの。
夫婦で仕事するもんじゃないね」
私は深々と溜め息を吐き出す。
リューマにヤキモチを妬かせるなんて、
リューマがヤキモチを妬く事なんてあるんだろうか……?
リューマは結構ニブイ人だからきっと、私がヤキモチ妬いてる事も
妬かせようしたとしても、
きっと気づかないに違いない。
感覚が普通じゃないから、ホントに。
女の子を下の名前で呼ぶ時点で、私の気持ちなんて考えてくれてない。
「オレはヤキモチ妬いてんだよ?」
一人で思い巡らしていたら、ヨシが小さく溜め息をついて、真っ直ぐ私を見据えた。
「え?」
目力のあるヨシは鋭い視線で私をじっと見つめる。
パーマが緩くかかった長めの前髪が、目元にかかって彫り深い顔を際立たせている。
切なげな眼差しに
心臓かドキッと跳ねた。
「……誰にヤキモチ妬いてんの?」
ヨシの眼差しにドキドキしてきて、
ヨシの言っている意味が理解出来ずにいた。
「オレがミユキを諦めたとでも思ってた?」
「え……?」
ヨシの今さら言ってる事に不可解に感じて、見つめ返した。
「オレはまだフリーでいるから、また乗り換えたくなったらいつでも相手するよ?」
瞳が私をからかうように煌めいた。
「ヨシ、私と過ちを犯したら、法で罰せられるんだよ」
からかってるだけだと分かっていたけど、
ヨシの顔を仰ぎながら、呟くように言った。
「バレなきゃいいんだよ。
そもそも隠れて付き合うのがオレらのやり方だったろ。」
「…………」
すっかり忘れていたけど、私たちはそんな仲だったんだ。
ヨシの声は楽しそうで、本気じゃなくて
この状況を楽しんでいるだけのように見えた。
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