39人が本棚に入れています
本棚に追加
リューマはスタッフルームにあるミユキが座っていた椅子に腰かけて、オレと対面した。
リューマは小さく息をつくと
腕を組んで、足を投げ出した。
「リューマとミユキは小さい事でよくケンカするのな」
オレはボソリと言いながらリューマを見る。
「ケンカじゃないよ。
じゃれあってるだけ。
ミユキは、生理になるといつもああだから」
リューマはなんて事ないように笑って見せた。
コイツは、自分の魅せ方をよく知っている。
仕草ひとつひとつに自然に目が奪われてしまう。
ミユキもいつも一緒にいながら、よくリューマにボーと見惚れてる。
男っ気がないくらい
女みたいな整った顔で肌が綺麗で
メイクでもしたら、そこら辺の女より美女になりそうだ。
「……美容師って、客に媚売って大変だな」
リューマはテーブルの端に置いてあるベーカリーに手を伸ばした。
「美容師に限らずサービス業はみんなそんなんだよ。お金を落としてもらわなきゃ」
「ヨシは美容師になって良かったって思う?」
「……普通のサラリーマンよりはいいかな?
リューマみたいな存在してるだけで、金を作れるような特化したモノが自分にあれば良かったけど」
「ヨシも格好いいからモデルになれたよ」
「モデルなんて稼げないだろ」
「……そうだけど」
リューマは自分で買ってきたパンを頬張る。
モデルなんて、リューマみたいに手足が長くて8頭身じゃないとなれるもんじゃない。
「よく、パンばかり食ってんのな」
「ヨシも食べなよ。オレのイチオシのベーカリー。うまいよ?」
リューマがベーカリーの入った袋を差し出す。
「弁当食ったばっかりだからいいよ。
ところで……」
「?」
「急にミユキと結婚したのはなんで?」
リューマが、衝動的に結婚を決意したのが、不可解だった。
「好きだからに決まってんじゃん」
最初のコメントを投稿しよう!