第1章

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不倫していた人妻自殺のスキャンダルから数ヵ月、ミユキはリューマからの連絡がなくてだいぶ落ち込んでいた。 テレビでも取り上げられなくなり、ドラマの役もレギュラーの仕事も、全て降板して、リューマは忽然と姿を消したんだ。 それで久しぶりに現れたと思ったら、いきなりミユキにプロポーズ。 オレはミユキと元のサヤに収まろうと目論んでいたけどあっさり敗北。 「結婚には慎重に見えるのに、ずいぶん時間かけずに結婚を決めたよな」 「そこ、そんなに知りたいの?」 リューマは意外そうにオレを見た。 「そりゃ、横取りされたのが悔しかったからな」 それだけの理由じゃないけど、 結婚がオレにとってかなりハードルが高いものだったから、ただ単純に、リューマが結婚を決意した心理を知りたかった。 それに、相手がミユキじゃなくても リューマだったら、いくらでも選べた女性はいただろうに。 「インスピレーションだよ」 リューマは笑った。 「オレ、運命の相手がミユキだと感じたから。 性欲を絶ってたら、そうゆうインスピレーションが働いたんだ。」 「……?」 「煩悩を抑えると、インスピレーションが働いて正しい判断が出来るんだよ。 オレは むやみにセックスするのを辞めたの。そしたらミユキに出会って、゛この子だ゛って直感で感じた。」 「…………」 リューマがニッコリ笑った。 男っ気がなく見えるのは、女性寄りな感性だからか。 「ミユキと同類だな」 二人が惹かれ合うのが何となく分かる気がする。 でも 運命の相手なんて、 そんなの錯覚してるだけだろ? 「あ、ヨシ、今 鼻で笑ったね?」 「そう?」 ……笑ったけど。 「ヨシもやってみなよ? 断捨離みたいに捨てる事によって得る事もあるんだよ。 何かを得たかったら、何かを捨てるんだ。」 「性欲をずっと捨てていたら、使えなくなって困るだろ?」 「大丈夫。オレはちゃんと使えたから。 感度良くなって、サイコーのセックス味わえるよ。」 リューマはニヤリと男の顔で笑った。
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