第1章

2/35
39人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
「俳優業までやってしまうとさ、生活をガラリと変えなくちゃいけないから」 リューマは食べ終えた皿をシンクに運びながら、コーヒーカップに残ったコーヒーを一気に飲み干した。 「不規則な生活になるし、台詞覚えたり、役にのめり込むから、結婚して家庭を持ったら、辞めてもいいって思ってたんだ。」 リューマは、皿を洗い始める。 「演技するのが好きなのに……?」 リューマはちゃんと、自覚してたんだ……。 ゴメン、既婚者の自覚ゼロなんて 思ってしまって。 ドギマギしてリューマを見つめる。 「演技が好き? オレは演技が好きなワケじゃない。 あくまでも与えられた仕事だから、精一杯やっていただけ。 オレを拾ってくれた今は亡き恩師が、 どんな小さい仕事でも与えられた仕事をやりこなせば、信頼に繋がって、自分が活かされるって教えてくれたから それがオレの人生の教訓になってんの。 その恩師に出会わなければ、オレは人生を棒にふっていた。」 リューマはサッと洗い物済ませると、言葉を続けた。 「だから、仕事は選ばない。 何でもオレはイヤじゃない。 だからマネージャーのミユキが持ってきた仕事を精一杯するだけだよ。」 リューマは二ッと笑って、着替えを済ませるために寝室に入って行った。 仕事をそうゆう価値観でやりこなせるリューマって 尊敬しちゃう。 元々俳優志望なワケじゃなかったんだ。 ただ、モデルの仕事から、役のオファーがきて、俳優になったんだ。 仕事は選ばないで何でもやりこなす。 そうゆうスタンスがリューマに出世運を呼び込んだのかもしれない。 実力が伴っていくのは、リューマの長けた分析力。 俳優なら徹底した役作り。 モデルなら皆が袖を通したくなるような 着こなし方、魅せ方の工夫。 自分の魅力を最大限に発揮して、稀な綺麗なルックスと完璧なスタイルを、持て余す事なく前に押し出してしまうリューマ。 リューマを見飽きるなんて事は この先あるわけなくて 私はきっと、魅力溢れる美しい夫に毎日見とれて、 妻でいられる事に 幸せを噛みしめてやまないんだと思う。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!