第1章

20/35
前へ
/35ページ
次へ
本当のところ、リューマには感謝もしている。 アイツのおかげで、売り上げが落ちる事はなくなって、店長として数字で気をすり減らす事はなくなったのだから。 「店長さん、今日 何か撮影が、あるんですか?」 指名の女性のお客様のカットをしていると、そのお客様がチラチラ視線をリューマや撮影スタッフに向けていた。 「よくここで、広告の撮影をしてるんですよ」 最近よく同じ受け答えをしていたから 同じ質問をウザく感じた。 「あの方、ルイさんの彼女なんですか?」 カットしてる最中なのに、お客様は撮影している方を気にして頭を揺らす。 ……切りにくい。 ミユキの事を言ってるのかと思ったら、見ると、どうゆうワケかリューマと相川が寄り添っているところをカメラマンが撮影している。 リューマの屈託のない笑顔の横に、相川がリューマの肩にもたれ掛かかっていて、カメラマンに写真を撮られている。 恋人同士みたいな設定なのか? てゆーか、なんで相川まで一緒に撮影されてんの? ミユキは何してんだと思ったら、少し離れた所で吉川さんと話をしていた。 時おり視線をリューマと相川に向けて、唇を噛み締めている。 きっと、胸の内は穏やかじゃないはず。 担当のお客様が終わると、 一人でカウンターにいるミユキの側に近寄って訊いてみた。 「なんで相川まで写真撮られてるの?」 「恋人同士の設定のCMの静止画撮影なの。 始めは私が相手役にって言われたんだけど、私、そうゆうの苦手だから、断ったらリューマが相川さんを指名して」 そうゆうと、唇を噛み締めて、予約表に視線を落とした。 明かに心穏やかではない様子のミユキ。 「なんで断るの? 相川にさせる事ないじゃん。いいの?あんなに見せつけられて?」 「私、写真撮られるの、本当に苦手だから」 だからって、リューマと相川がああやって顔を近づけたりしているのは、面白くないだろーに。 あーあ。 リューマって、本当にアホだな。 言った側からコレだもんな。 「本当は悔しいんだろ?」 「…………」 そう言葉を投げかけるとミユキは黙ったまま何も言わず、感情を押し殺していた。 リューマ 女のジェラシーの怖さを知らないのな。 いつか爆発するぞ、コレ。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

39人が本棚に入れています
本棚に追加