第1章

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結菜の旦那は憎悪を込めた目でオレを睨みながら、拳を握りしめていた。 確かに、婚約者だった結菜に手を出されて面白くなかっただろうし、自分の事は棚に上げて、オレのせいにしてる方が、気はラクだったんだろう。 だけどさ、 たった1度、愛のないセックスしただけだよ? 結菜はアンタを愛してたのにさ、 裏切って傷つけて、自殺に追い込んだのはどっちだよ? オレだって、自分のせいだなんて 思いたくはない。 ……でも、 結菜が死んでしまった事には変わりない。 結菜は苦しんで 死んだ。 結菜の旦那は目に涙をにじませ、オレに拳を振りかざした。 ………… オレだって 泣いていた。 結菜の旦那が振りかざした拳を避けたら、 ヤツは転倒。 運悪く、開いていたドアに派手に頭をぶつけて、 頭を抱えた箇所から流血。 うめき声をあげながら 嗚咽した。 結局、勝手に自傷したのに障害事件にされて、 結菜との関係で慰謝料を払うハメになった。 でも、もう裁判とかメンドーだから、示談金を払って、きっぱり結菜との事は決着をつけた。 けど、 オレは、結菜を拒んだ事が、 もしかしたら、 それが、死に追いやった原因もあったとするなら オレが結菜を殺したのも同然。 『抱いてほしい』と言われ、セックスぐらいしてあげれば 結菜は死んでしまう事はなかった? たかがセックスで人の命を救えたとは思わないけど 体だけでも満たされれば 死のうだなんて 思わなかったかもしれない。 でも ミユキに出逢ってから ミユキ以外のオンナは抱きたくかった。 セックスは減るもんじゃないってゆーけど 愛のないセックスは 真実の愛を見失う。 そんな気がした。 ミユキは失いたくない。 傷つけたくない。 ミユキはオレには欠かせなくて ミユキしか もう愛せないと思ったんだ。
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