第1章

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リューマって本当に人懐っこい人。 見知らぬ人でも、誰でも仲良くなってしまう。 独りっ子で片親だったていう生い立ちもあるのかもしれない。 ご両親が離婚して母親にに引き取られ、 母親は再婚しているから きっと、リューマは孤独と隣り合わせで育ってきたのかな。 それでも根っから明るいこの性格は どうやって培われたんだろう? 都内某所にあるHair Make Grosslyの総本部は、ビルが立ち並ぶオフィス街にあった。 「今日は何の打ち合わせなの?」 「POP広告のデザインと編集の打ち合わせ。あと、CMの放映も静止画で検討してるみたい」 エレベーターに乗り込もうとした時に、寸前に企画部の吉川さんも入ってきた。 「あ、リューマさん、ミユキさんおはようございますー」 私とリューマも吉川さんと挨拶を交わすと、今日のスケジュールの話を始めた。 「この間撮った写真が上がっているので、編集しながら構成していきますんで……。 あと、広告のキャッチコピーをお二人にも考えて頂きたくて……」 吉川さんと3人で 本部のオフィスに足を踏み入れながら、 リューマが呟く……。 「キャッチコピー……」 リューマは端正な顔を真顔にして熱心に考え始めた。 リューマの懲り性の性格が、垣間見える。 私は頭使うのはダメ……。 キャッチコピーってユーザーを惹き付けるフレーズでしょ。 全然思い付かない。 「この間、撮れた写真なんですけど、広告デザインの方がピックアップした数枚がコレになります」 企画部オフィスのテーブルに置かれたパソコンのスクリーンに写真が並べられる。 リューマの髪型をセットしている私が写っている。 自然な笑みを浮かべて自分が映る鏡を見つめるリューマの姿に 私の不自然に引きつったような表情…… それを見て、リューマが「ぷっ」と大袈裟に吹き出した。 クックックと肩を揺らして笑いだす。 吉川さんと、他の企画部のスタッフが、笑いにつられないように、耐えているのが分かる。 私の顔、緊張しすぎ……。 そしてリューマ、笑いすぎ! リューマの遠慮ない笑い方にイラッとしながら、それをムシして口を開いた。 「私が映ってない写真を使って下さい」 私は口を尖らして吉川さんに向かって主張した。
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