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「新作のマーフィンもサービスでつけておきましたから。」
「さんきゅー」
20代前半であろうリョウコさん。
素朴なナチュラルな風貌で可愛らしい。
リューマは愛想のいい笑顔でニコニコしながら
顔を赤らめるリョウコさんからベーカリーが詰まった袋を受け取ると、
「さっ行こ」
と私の背中を押した。
リョウコさんから浴びせられる間違いなく嫉妬であろう鋭い視線が突き刺さる。
「また来週新作ベーカリーが店頭に並ぶんで寄ってくださいね!」
私達の背中に叫ぶように言われて
リョウコさんの声にまた爽やかな笑顔で振り返り手を軽く挙げたリューマ。
「また来るよ」
その笑顔!その笑顔!その笑顔!
女子のハートに火をつけてしまう。
リューマ、
私を敵視する人が増えるから
そんな笑顔を気軽に見せないで……。
案の定、チラッとリョウコさんを見るとウットリしたハートになった目で私達を見送っていた。
「うまー」
リューマは紙袋からシナモンロールを取り出して、口に運んでいる。
リューマって28才なのに、若く見える。
肌は滑らかで綺麗だし
表情がコロコロ変わるところも
魅力的なんだよね。
「……なに? ミユキも食べる?」
じっと見つめているとリューマは持っていた紙袋を差し出した。
「……食べ歩きはできないよ」
「誰も見ちゃいないよ」
人目を一切気にしないリューマ。
「ちょっとは周りの目も気にしてよ」
「あっ、思い付いた。キャッチコピー。
“シナモンの香りにボクと君。触れあう君の肌と髪。髪の香りに君を想う“
どう?
シナモンのやみつきな香りにやみつきにな彼女と髪をリンクさせたんだけど……」
リューマは口の中をモグモグさせながら、
言った。
「オレがメインで写ってるから、メンズ目線で、さ」
リューマ、ずっと考えてたんだ。
「ポエムみたいだね。シナモンってあんまし関係ない気がするけど?」
「スパイスってやみつきな味覚じゃん。サロンもやみつきなサロンとして利用して欲しいって意味も込めてさ」
リューマの与えられた仕事に対する意欲は感心しちゃう。
「リューマってアイディアマンだったのね」
「まあね。ロマンチストって言って」
ニカッと眩しく笑うリューマは
自分の振り撒く魅力を自覚してないんじゃないかって思ってしまう。
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