第1章

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5階建てのビルの2階にあるHair Make Grossly。 リューマとサロンの中に足を踏み込むと、相川さんがお客様の施術を終わらせて、お帰ししている最中だった。 「またお待ちしてますぅ。次回は是非ヘッドスパの施術も一緒に」 相川さんは満面の笑みを見せながら、お客様のジャケットをお渡して羽織わせていた。 「うん、また来月ね。 相川さん今度食事に一緒に行かない? 休み、火曜日だよね?仕事終わってからでもいいし」 相川さんはよくメンズのお客様に食事に誘われている。 なかなかの美意識高そうなイケメンのお客様だ。 「仕事終わったらスタッフのトレーニングがあるのでなかなか時間が作れないんですけどぉ、時間が合えば是非」 相川さんは甘ったるい声で応えている。 相川さんのセクシーな微笑みは男じゃない私でもドキドキしてしまうほど魅力的だ。 「じゃあ、また連絡するね」 メンズのお客様は手を軽く挙げてサロンを出て行こうとした時、リューマの存在に気付いた。 「わっ、ルイさんだ! ホンモノにやっと会えた」 メンズのお客様は目をキラキラさせてルイを見る。 「うちのサロンに、ごひいきありがとうございます」 リューマは営業的スマイルで軽く会釈をした。 リューマはきっとメンズからも憧れの存在なんだろう。 メディアに一切出てないのにやっぱりリューマの知名度はまだ高い。 「ルイさん、やっぱ半端ないイケメンですね。テレビで観れなくなって、残念ですよ。噂でここによく来るって聞いて美容室変えたんです」 「それはそれはどうも嬉しい限りです。 ちなみに僕は今本名リューマで活動してますので」 ニコニコ微笑むルイは握手をせがまれていた。 リューマって本当に存在価値のある人だ。 メンズのお客様は意気揚々として帰っていくと、リューマは小さく溜め息を吐き出す。 「疲れんなー。作り笑いって」 「リューマはいつまでたっても芸能人扱いだね」 「オレってそんなに人に知られてたんだね。自覚なかったけどな」 「だから、人目も気にした方がいいって言ってるんだよ」 「悪い事してるワケじゃないし、いーじゃん別に?」 「どこで悪い噂たつか分からないし、イメージキャラクターをやってる以上は、見られてる意識持ってほしいの」 「……はーい。マネージャー」 リューマは私をチラ見して素直な返事をして見せた。
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